「小説太田道灌」


『小説太田道灌』

読者感想文・書評編

装丁・露木博子

はじめに

「感想文」と「書評」ですので、いわゆる「拝受」通知ではなく、実際に
お読みになった旨したためられたお便りのみ、ご紹介させていただき
ます。また、当HP上に掲載することにつき、全ての方に予めご了解を
得たわけではありませんので、お住いの大まかな行政区画とイニシ
ャルのみの「匿名」とさせていただきます。(ただし、とくにご明確に了
解をいただいている場合は別です)また、通信文の中にプライベート
な内容が挟まっている場合は、その部分を割愛をいたしますので、
ご承知下さい。なお、紹介は順不同です。

②伊東市・TM氏 「東国の戦国時代は起っていたのですが、作家がな
かなか手をつけない部分に光をあてられた素晴らしい作品です。作家が
執筆しなかったのは、確たる史料がないのも一因のようです。だからと
いって手をつけなかったのは残念。
 太田氏の江戸城、道灌の死、道灌の主従関係、未知な部分がたくさん
あります。作品ではこれらを乗りこえる苦労が伝わってきます。」 

③横浜市・KS氏 「読ませていただきました。何年かぶりに小説を読み
ました。医学書ばかりでしたので、仕事の合間に一気に読みました。面
白かったです。次回を楽しみにしています。」

④鎌倉市・FK氏 「周到な史料の渉猟とその解釈に一家言をもって書き
下ろされた本格的な歴史小説を、敬意をもって一先ず読了しました。
小生が研究している後北条一族の歴史の中で、早雲(伊勢新九郎)の
同時代人(同年齢)の道灌は興味の対象でした。関東公方・堀越公方・
両上杉管領・三浦義同・大森氏頼ほか、守護大名今川氏などの興亡の
陰に早雲と道灌との親交場面もあったと聞いています。これからさらに
熟読してまいります」

⑤伊東市・UOさん 「拝読いたしました。これを受け取りタイトルを見た
瞬間「うーん、歴史小説か」と正直重い気持ちで呟きました。馴染みが
なく、自分では手に取ることがないからです。そんな私が読み始めから
物語に引き込まれ、一気に読んでしまいました。まずはこの事をお伝えし、
拍手を送りたいと思います。
文章力や構成力のレベルの高さは今更言うまでもないことですが、何よ
りも人物一人一人が実によく描かれていて、それにより物語に深みが出
たように思います。
テーマは現代社会にも通ずる『人としての品格』でしょうか。とにかくプロ
の作品と言えましょう。」

⑥小田原市・TK氏 「小説を読んでの感想ですが、よく出来てます。た
だし、筋としてもまた結末としてもとても良く、一気呵成に読ませる筆力
は申し分ありませんが、こういうと辛口の批評になってしまうのですが、
もう少し長く、いつもいっていることなのですが、遊び、言葉の空間と申
しますか、隙間、空気抜けがあっても良かったのではと悔やまれます。
資料分析、解析力は、さすがとうならせる面は多分にありますが、一気
に書き上げたスピード感があってとても良く、筋立てもすばらしいので
すが、潤滑油的な点が欲しい気がしました。筆の冴えも見られ、見上げ
たものです。よく纏められたと思います。」

⑦秦野市・KI氏 「もう一度落ち着いて読んでみたら、一読目には見え
ないものも見えてきたような気がします。やはり道灌の存在感は圧倒的
ですが、そのほかの人物にもきっちり存在感があって、それが小説を
重厚なものにしている気がしたのです。伊勢新九郎や李正、或いは兵庫
無慙で主役を演じた曽我兵庫は言うに及ばず、あの定正の中にさえも、
しっかり人間が感じられました。兵庫無慙の定正は、正直言ってただ嫌な
奴だとしか感じられなかったのですが、こちらの小説で描かれた定正は、
あまりに過ぎた家臣をもった凡人の悲劇というようなものが感じられて、
どこか悲しい。或る意味、陽の主役が道灌なら、陰の主役はこの定正では
なかったかとも思えてきました。また一方には新九郎の暗躍があって、道
灌と新九郎の対比も面白く読みました。冒頭にありました道灌になかった
角とは、の答えがこの新九郎の中に見るような気がして、玄鬼の言葉に
あった<生き方が綺麗すぎる>というのが悲しく響きます。
 さっきから人物のことばかり言っているような気がしますが、それよりも
私が強く感じたのは、非常に文章が鋭いというか、研ぎ澄まされていると
いうか、例えば女流作家とかの描く歴史物だと、戦の場面さえどこかに王
朝文学的な柔和さがあるのに対して、こちらでは静かな場面さえどこか
張り詰めた緊張感が感じられて、特に最後の文章が印象的でした。これ
から先の下克上の暗い世を暗示しているような感じがして。」

⑧横浜市・TI氏 「太田道灌については江戸城築城の人物、そして山吹
の花にまつわる人物としか記憶していなかったが、いい勉強になった。資
料を自家薬籠中のものにしている。十分に消化されていると思った。なぜ
彼が定正に討たれたのか。主に謀反を企てた、単純にそんな図式ではな
いことが明らかにされていて、新しい道灌像が浮かび上がってくる。はな
はだ魅力のある人物としてスポットが当てられているのが良い。脇役のそ
れぞれも生き生きと描かれている。定正にしても彼なりの苦衷が示され
ていて、単なる悪役でないのもいい。特に兵庫に筆が運ばれる場面は、
正に彼の面目躍如として、それが道灌や定正をも生かしてくる。葉書にも
書いたがこの兵庫という人物が非常に魅力的で、もし現存する人物だっ
たら会って話を交わしたいと思う。それほど勝れた男だと思わせる筆力に
感服した。数人の女性も描かれ君なりに人物像を考えたのだろうが、男
達の描写にはいささか及ばないのではないか。誤解しないように。女性の
存在が薄くても、それはそれなりにしっかりと描かれている。るいと菜摘、
あの時代のしかもあの立場にある女の哀れさ、それを訴える力を感じる。
ただやはり筆者が男であることが、男性像を生き生きと創り上げたこと
に、そしてその為にも女性像の彩りが淡くなったのではないか。
 二百五ページから最後までは一気に読んだ。緊迫した情景が道灌、兵
庫の会話から醸しだされて先を急がせられる思いだった。謀殺を知ってい
た彼、それをあえて受けた彼の心中を思うと、そこに一人の勝れた一代
の英雄が辿らざるを得なかった残酷な歴史の面を見た。
 重い内容だが、端正な文章でなかなかのものと感じる。時代小説はうっ
かりすると中間小説的になると思う。それはそれで良いが、市井の人物
でない主人公の時はやはり重厚な筆致が欲しい。そういう点では満足が
いく。」


⑨福岡県・YNさん 「感心しました。これほどの情報を得られ、しかも情報
がみな、きちんと生きている。言葉もよくこれだけ整えられていると、私な
ど、ただただ感心する他はありませんでした。権謀術策にみちた時代を生
きる男たちが、人の心の裏や言動の裏を察知し、それにどう対処するか。
上に立つ人間の器量が狭い場合の、能力が高い部下の忍従と思いの複
雑さ。安易さがない、しっかりとしたドラマになっている。
 会社経営のうえでのさまざまな局面と「小説太田道灌」の世界が重なり
ました。この時代、女も女の出来る役割を果たして参加していて、気が抜
けなかったのでしょうね。
「ならば、当方滅亡」最後の道灌の言葉が、すっと入ってきて、快感さえあ
ります。この小説は、絶対に、「男が書いた男に読ませる」小説です。」

「小説太田道灌」を寄贈さ
せて戴いた図書館


□国立国会図書館

□東京都立中央図書館
□東京都立日比谷図書館
□東京都立多摩図書館
□品川区立品川図書館
□文京区立小石川図書館
□目黒区立八雲中央図書館
□新宿区立中央図書館
□八王子市立図書館

□川崎市立中原図書館

□神奈川県立図書館
□横浜市立中央図書館
□横浜市立金沢図書館
□横浜市立磯子図書館
□横浜市立神奈川図書館
□横浜市立港南図書館
□横浜市立中図書館
□横浜市立南図書館
□横浜市立都筑図書館
□横浜市立鶴見図書館

□横須賀市立図書館
□鎌倉市立図書館
□平塚市立図書館
□茅ヶ崎市立図書館
□秦野市立図書館
□伊勢原市立図書館
□湯河原町立図書館

□静岡県立中央図書館
□静岡市清水中央図書館
□熱海市立図書館
□伊東市立図書館
□伊東市八幡野コミセン
  図書室
□東伊豆町立図書館
□伊豆国市立中央図書館
□下田市立図書館
□駿東郡清水町立図書館
□沼津市立図書館
□掛川市立中央図書館
□富士市立中央図書館
□浜松市立中央図書館

□さいたま市立東浦和図書館

2007・9・5現在
    ※合計 41図書館

岩漿文学会事務局

⑩小田原市・HTさん 「小説太田道灌、よみ直し、冴えた筆に感動いたし
ました。」

⑪伊東市NM氏 「全編張り詰めた文章のように思える。あたかも剣豪の
前に居合わせられたような・・・研ぎ澄ませた・・・で・・以前いただいた「岩
漿10号の「小説太田道灌 兵庫無慙」を再読? こちらの方で、ほんの少し
ばかりホッと息をさせてもらったような・・」

⑫伊東市KK氏 「「道灌」は、構成・文学的表現もすばらしいと思いまし
た。私なぞのように記録や伝承を散文的に書いていると、歴史文学の
圧倒的な表現に引き込まれて、こちらが歴史の真実だと、心が納得して
しまうことが多いものです。ますますのご健闘を祈ります。」

⑬熱海市HOさん 「多才な書き手でいらっしゃいます。改めて今回、歴史
小説を拝読して驚きました。私には「太田道灌」はむずかしかったです。
ほとんどその知識と、その時代に関しての興味がなかったせいですけれ
ど、勉強させていただきました。・・・歴史小説を書く友人がいます。資料
集めにやはり五年、十年かかり、いざ書き出すと、その中から半分以上
は捨てざるを得ないとのこと、そうでしょう。そこが史実を扱う歴史小説
のむつかしさと、十分判ります。」

⑭藤沢市FIさん 「頂きました御本は朗読いたしまして、有難うございまし
た。非常に読みやすく、考証がキチッと出来て良質の本になって感動しま
した。製本前の作では李正が影に出ていましたが、今回は兵庫で〆られ
ております。これは成功だったと思います。ただ文章としては思いつくまま
ですが、 (・・・p85・p89・p129・p123・p167・p181の表現につきご指摘が
ありました/註) ・・・言葉について文句が多かったと思いますが、大衆小説
というか、一般的に使い回しした言葉を目立つ所では使わないこと。
『あとがき』がよく出来てましたので、何か後記から読み始めた方が、なん
て気になりました。・・・良い本になりましたネ。更なる思いが重なるという
ことです。時代ものでこれ丈書ければ、言挙げせず、なんですけど。」


⑮小金井市KG氏 「応仁の乱の後の関東の戦国時代の下克上を颯爽と
生き抜いた太田道灌を描いた本格的な歴史小説である。戦国時代の関
東の数多くの小さな城とその主達の離合集散の中で江戸城の太田道灌
が主君と仰ぐ関東管領、扇谷上杉定正に殺されるまでの話である。手を
下したのは道灌子飼いの武将曽我兵庫である。川越城の主、定正のもと
に幽閉されている兵庫が何故尊敬している道灌を切らねばならなかった
か? 道灌も兵庫も人間味溢れる武将である。最後の悲劇的クライマッ
クスへいたる必然性を、周りの家臣や女性たちの心の揺れを活写しなが
ら読者に納得いくように描き出している。この小説は構成に隙が無く、ス
トーリーがダイナミックに展開していく。骨太の本格的な歴史小説である。
とくに関東地方の戦国時代の群雄割拠の歴史はあまり知られていない。
文献をくまなく渉猟、考証し、足で現地に立ち、戦国時代の人々の激しい
心の動きを想像しながら描いた小説である。
 誰もあまり取り上げなかった関東の戦国時代を取り上げたことがこの小
説の新機軸でもあろう。そして流れるような文章が独特のリズムをかな
で、この長編を読みやすくしている。
 最初の書き出しはこうである。「蛟竜とは角の無い竜のことで「みずち」
ともいう。江戸城築城で有名な太田道灌は蛟竜であった。角さえあれば
一気に天に登れたのである。では、道半ばにして斃れた道灌に、欠けて
いた角とは一体何だったのだろうか」
 馬場駿は何が欠けていたかとは断定しない。読者が各人それぞれの
解答を考え出せるように色々な部分に明快なヒントを与えている。この
最初の文章を読み返しながら各章を読んでいくと人間の偉大さ、弱さが
身につまされて「やっぱり道灌は殺される悲劇を避けられない」という思
いにとらわれる。」


⑯東大和市TO氏 「貴著を拝読させていただきました。力作と感服いたし
ます」


⑰八王子市MY氏 「本格的に楽しませていただきました。それも道灌を
主人公にして、ぐいぐい・・・というのでなく、その周りの人物から迫ってい
く、という、通の書きかた! これはスゴイですね。特に季正と兵庫の言動
が、道灌という人や時代や、これから起こる本格的な戦国時代を展開さ
せていく、という凝った書き方で、本格的な読者を唸らせるものでした。
上杉定正、顕定の人となりも、納得させられる形で登場しています。戦国
入口の関東武士団の群像が、作者の想像力で、そこに生きて動いている
かのように展開されているのが、楽しいといいますか、スゴイと思いまし
た。よくもここまで構成されたと思います。幻鬼、さらに北条早雲が、サイド
からの横糸のようにしっかり絡んでくるーーーのもよくかかれておりますの
で、ただただ「スゴイなあ」と思わせてくれました。しかし、「素人の読者」と
して、道灌の死(自死)が今ひとつ残念なのでは・・・そう思わせてくれまし
た。もっともこれは、作者の極上の美学、生き方に基づくものと「玄人の読
者」は思わずにはいられません。・・・こうして、大人物に傾倒して、時代を
描ききった馬場駿という作家の構想力と表現力に、尊敬の念を心底から
抱かずにはいられません」

文芸タイムス・佐々木国広の書評

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